万葉集の心は、次の3点に集約されます。
一つは「命への信頼」。人や動植物はもちろん、あらゆる物(例え無機物にさえ)に命があると信じ、命こそ第一のものとして信頼し逞しく生きて行く姿勢。
二つ目は「笑いとユーモア」。万葉の庶民の生活は想像以上に辛いものでした。万葉人たちは、笑いとユーモアで辛い暮らしを乗り越えるしかない。笑いというものは当時の庶民が生きる術・武器だったのです。
三つ目は「恒常性・普通ということ」。日常の普通の生活を拠り所にした確かな精神、日常の暮らしの中にこそ普遍的な真理があるとする生き方です。
以上3点は結局のところ「ごく普通の人間として確かに生きていくこと」であり、人間が人間である基本に根ざした考え方です。
浮薄になりがちな現代人にとって、今こそ、この万葉の心が必要なのではないでしょうか。


1929年、東京に生まれる。東京大学および大学院において久松潜一氏に師事、浩瀚の学を志す。以後高木市之助氏に私淑して感性の学を学び、土居光知氏の薫陶を受けてユーラシア文化学を学ぶ。
目下、日本古代の比較研究を始めとして、日本文化、日本精神史について研究、評論を行う。
主要著書として『万葉集の比較文学的研究』(読売文学賞)『万葉史の研究』(前著とともに日本学士院賞)『万葉と海彼』(和辻哲郎文化賞)『源氏物語と白楽天』(大佛次郎賞)『中西進の万葉こゝろ旅』(奈良テレビ放送文化賞)などがあり、『中西進万葉論集』(全8巻)『中西進日本文化をよむ』(全6巻)を編集、以後の著作による『中西進著作集』(全36巻)を現在刊行中。
長く職を大学に奉じ、大阪女子大学長、京都市立芸術大学長ほかを歴任、日本比較文学会長、東アジア比較文化国際会議会長、日本学術会議会員などをつとめた。
現在、全国大学国語国文学会長、日本ペンクラブ副会長。
2004年文化功労者、瑞宝重光章受章。








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